代車の貸出同意書テンプレート|注意書き・契約書に入れる項目とチェックリスト

整備工場や鈑金工場が無料で出している代車でも、貸出の条件は同意書にして、お客様の署名をもらっておくほうが安全です。期間を決めずに貸した無償の代車が返ってこず、裁判で1日6,050円、150日分の損害賠償が認められた例もあります。この記事では、代車の貸出同意書(注意書き・貸出契約書)に入れる項目を表にまとめ、そのまま書き換えて使えるひな形文面、貸出前と返却時のチェックリスト、代車を有償のレンタカー(わナンバー)にした場合に求められる書類を順に紹介します。

代車の貸出同意書が必要になる理由

代車の貸し借りは、口頭の「どうぞお使いください」で始まることがほとんどです。普段はそれで困りません。困るのは、返却日がずれ込んだとき、返ってきた車に見覚えのない傷があったとき、代車で事故が起きたときです。どれも「最初にどう約束したか」で話が決まりますが、口約束では双方の記憶が食い違います。

国民生活センターの『国民生活』2025年9月号「暮らしの判例」は、中古車販売店が無償で貸した代車をめぐる裁判例を紹介しています。水没歴のある中古車を買った会社が代金の返還を求め、販売店が反訴で、無償で貸していた代車を返さなかったことによる損害の賠償を求めた事案です。

前橋地裁太田支部 令和5年9月20日判決(国民生活センター「暮らしの判例」より)

代車の提供期間は「本件自動車の取扱いが決まるまでの期間を前提としていたため、期限を定めなかった」とされました。裁判所は、代車の貸し借り(使用貸借)は返還を求める書面が届いてから10日後に終わったと認め、代車の「1日当たりの使用相当損害額は6050円を相当」として、150日分の90万7500円の賠償を認めました。

この判決から読み取れるのは二つです。一つは、無償の代車でも、返却を求めた後に返さなければ損害賠償の対象になることです。もう一つは、期限を決めずに貸すと「いつまで貸す約束だったのか」が争いになり、終わりの時点を後から認定してもらう手間がかかることです。この事案では販売店が書面で返還を求めていたので、終了日を認めてもらえました。最初の貸出時に返却日を書面で決めていれば、そもそも争点が一つ減ります。

代車の同意書は、お客様を疑うための書類と受け取られがちです。実際には、燃料や傷の扱いを先に決めておくことで、返却時に気まずい話をしなくて済むという面のほうが大きいと考えています。

代車の貸出同意書(契約書)に入れる項目一覧

同意書に入れておきたい項目を、記入欄にするものと、条文として印刷しておくものに分けて整理しました。工場の運用に合わない項目は削り、足りない項目は足して使ってください。

項目書く内容書いておく理由
借主氏名(法人名)、住所、電話番号返却の連絡や請求の相手をはっきりさせます
運転者と免許証運転する人の氏名、免許の種類と番号、有効期限。免許証の提示を受けて確認した旨無免許や期限切れの運転を防ぎ、事故時の確認に使います
運転者の範囲借主本人のほかに運転してよい人(家族など)を書く欄知らない人が運転していた場合の扱いを決めておきます
貸出車両車名、登録番号、貸出時の走行距離、燃料の量どの車を、どの状態で渡したかを残します
期間と返却日貸出日時、返却予定日、返却場所期限を決めずに貸すと、終わりの時点が争いになります
燃料満タンで返す、貸出時と同じ量で返す、などの取り決め返却時の精算でもめないようにします
傷・事故時の連絡事故や傷を見つけたら、すぐ警察と工場に連絡すること連絡が遅れると保険の手続きが進まないことがあります
損害の負担借主の責任で生じた傷・汚れ・事故の修理費の扱い、自己負担の上限を決めるならその額請求するかしないかを事前に決めておきます
保険代車に付いている保険の内容と、お客様の保険の他車運転特約の有無を確認した旨事故時にどの保険を使うかを決めておきます
禁止事項禁煙、ペットの同乗、又貸し、営業目的の使用、改造など臭いや汚れの原状回復をめぐるもめごとを防ぎます
返還遅延返却日を過ぎたときの連絡義務、返還を求める手順、遅延した場合の損害の扱い裁判例のような長期未返却に備えます
交通違反駐車違反などの反則金・違反金の扱い後日届く通知の対応を決めておきます
個人情報免許証の写しを取る目的と保管期間取得の目的を説明しておくと受け取りやすくなります

表の中で特に抜けやすいのが「保険」と「返還遅延」です。保険は、代車に工場の任意保険が付いているか、付いていない場合にお客様の保険で対応するのかを、貸す側も把握していないことがあります。代車で事故が起きたときの保険の流れは代車の保険はどれが使えるか、事故後の手順は代車で事故を起こしたときの対応で詳しく扱っています。

代車の貸出同意書テンプレート(ひな形文面)

以下は、整備工場が無償で代車を貸すときの同意書のひな形です。下線の部分や「○○」を自社の条件に置き換えて使ってください。条文は短くしてあり、細かい取り決めは工場ごとに足す前提です。

このひな形は一般的な記載例で、法的な助言ではありません。損害の負担額や遅延時の扱いなど、お客様にお金の負担を求める条項は、定め方によってはかえって争いの種になるため、実際に使う前に弁護士などの専門家に確認してください。

代車貸出同意書(記載例)

株式会社○○自動車(以下「当社」といいます)は、お客様のお車の整備・修理期間中、下記の代車を無償でお貸しします。お客様は以下の事項を確認し、同意のうえ署名します。

  1. (期間)貸出期間は○年○月○日○時から○年○月○日○時までとします。延長が必要なときは、返却予定日の前日までに当社へ連絡し、当社の承諾を得るものとします。
  2. (返却場所)代車は当社○○工場へ返却します。
  3. (運転者)代車を運転できるのは、本書に記載した運転者に限ります。運転者は有効な運転免許証を携帯し、当社は貸出時に免許証を確認します。
  4. (使用目的)代車は日常の移動に使い、営業目的の運送、競技、他人への又貸しには使いません。
  5. (燃料)貸出時の燃料の量は○○です。返却時は(満タン/貸出時と同じ量)まで給油して返却します。
  6. (禁止事項)車内での喫煙、ペットの同乗、車両の改造、装備品の取り外しは禁止します。
  7. (事故・故障)事故が起きたときは、直ちに警察へ届け出たうえで当社へ連絡します。故障や警告灯の点灯に気づいたときも、使用を控えて当社へ連絡します。
  8. (損害の負担)お客様の責任による代車の傷・汚れ・事故の修理費用は、当社とお客様で協議のうえ、お客様の負担とすることがあります。(上限を設ける場合:ただし1件につき○○円を上限とします。)
  9. (保険)代車には(自賠責保険のみ/自賠責保険と当社の任意保険)が付いています。お客様は、ご自身の自動車保険の他車運転特約の有無を確認しました。
  10. (交通違反)貸出期間中の交通違反の反則金や駐車違反の違反金などは、運転者が対応し負担します。
  11. (返還の遅延)返却予定日を過ぎても返却がないときは、当社は書面で返還を求めます。正当な理由なく返却が遅れたときは、遅れた期間について当社に生じた損害の賠償を求めることがあります。
  12. (個人情報)当社は、運転免許証の写しを本貸出の管理と事故時の対応に限って使い、返却確認後○か月で破棄します。

署名欄には、借主の氏名・住所・電話番号、運転者の氏名・免許証番号、署名日を並べます。工場側にも担当者名と押印欄を設け、写しをお客様に渡しておくと、後で「そんな話は聞いていない」というやりとりを避けられます。

お客様に渡す「代車の注意書き」は、このひな形から禁止事項、燃料、事故時の連絡先の3つを抜き出し、A5程度の紙にまとめてダッシュボードに置いておくと読んでもらえます。同意書は署名をもらう書類、注意書きは運転中に見返す紙、と役割を分けると、どちらも短くできます。

代車の貸出前・返却時のチェックリスト

国民生活センターは2025年3月28日に「レンタカーでの傷トラブルにご用心-記録、確認、連絡!-」を公表し、利用前と返却時に必ず車の状態を確認して記録すること、返却時も写真を撮っておくことを勧めています。2021年3月の公表では、レンタカーとカーシェアの相談は年間500件程度で推移しており、「つけた覚えのない傷の修理代等を請求された」という返却時のトラブルが多いとしています。

工場代車そのものを扱った国民生活センターの公表資料は見つかりませんでしたが、借りた車を返すという構図はレンタカーと変わりません。貸す側から見れば、写真を撮ることは自分を守る手段でもあります。

貸出前に確認すること

  • お客様と一緒に車の周りを一周し、傷やへこみの位置をチェックシートの車両図に書き込みます
  • 前後左右とホイール、フロントガラス、車内の座席を撮影し、撮影日時が残る形で保存します
  • 燃料計と走行距離計を撮影し、同意書にも数値を書きます
  • 運転免許証の有効期限と、運転者が同意書の記載どおりかを確認します
  • 事故時の連絡先と、禁煙などの禁止事項を口頭でも伝えます
  • 返却日時と返却場所を、お客様の前で同意書に書き込みます

返却時に確認すること

  • お客様が帰る前に、貸出時の写真と見比べながら一緒に外装を確認します
  • 燃料計と走行距離計を撮影し、取り決めどおりに給油されているかを見ます
  • 車内の汚れ、臭い、忘れ物を確認します
  • 新しい傷が見つかったら、その場でお客様に伝え、写真を撮って記録します
  • 問題がなければ、返却確認欄に双方が署名し、返却日時を書きます

国民生活センターの事例では、返却時の立ち会いで「問題ない」と言われた後に、清掃中に見つかった傷で賠償を求められたケースが紹介されています。工場側としては、確認が済んで受け取った後から傷の話を持ち出すと信用を失います。確認はお客様が帰る前に終わらせ、その時点の結果を記録する運用にしておくと、どちらにとっても納得しやすくなります。傷が見つかったときの話の進め方は代車に傷をつけたときの対応にまとめています。

有償の代車(わナンバー)にする場合の貸渡約款・貸渡証・貸渡簿

代車を料金を取って貸すには、道路運送法第80条の許可(自家用自動車有償貸渡業)が要ります(代車を有料で貸すのは違法?)。許可を受けてレンタカーとして貸す場合は、国土交通省の通達「貸渡人を自動車の使用者として行う自家用自動車の貸渡し(レンタカー)の取扱いについて」(最終改正 令和4年5月31日)が定める書類をそろえることになります。無償の代車の同意書は工場が任意で作るものですが、レンタカーでは次の書類が許可の条件になります。

書類通達での扱い主な記載事項
貸渡料金・貸渡約款事務所での掲示、ウェブサイトへの掲載、書面(電子メール等を含む)のいずれかで借受人に明示します。変更したときは運輸支局長へ届け出ます料金、補償、禁止事項、事故時の取扱いなど(約款の内容は事業者が定めます)
貸渡証借受人に交付し、運転者に携行させます(電磁的な方法も可)借受人と運転者の氏名・住所、運転免許の種類と番号、登録番号、貸渡日時、貸渡事務所と返還事務所、貸渡人の氏名と住所、遵守事項
貸渡簿書面か電磁的記録で備え、貸渡しの終了日から2年間保存します借受人、運転者の氏名・住所・免許の種類と番号、登録番号、貸渡日時、貸渡事務所と返還事務所、走行キロ数、貸渡料金、事故に関する事項

貸渡証に書く遵守事項には、運行中は必ず携帯して警察官や運輸支局の職員から求められたら見せること、運転者の紹介やあっせんは受けられないこと、事故や故障のときの処置と連絡先、貸渡期間が2日以上になる場合は借受人が日常点検をすること、が含まれます。無償代車の同意書で決めていた燃料や傷の扱いは、レンタカーでは貸渡約款の中で定めることになります。

自社で許可を受けると、こうした書式を一から用意し、貸渡簿を2年間管理し、毎年5月31日までに貸渡実績報告書を運輸支局へ出す必要があります。わにゃふるカービジネスでは、加盟した工場がレンタカー事業者の営業所となり、本部の許可のもとでわナンバーの代車を有償で貸し出します。貸渡しに使う書式や日々の運用の手順は加盟店向けに用意しています。貸出までの手順はご利用の流れ、有償化で変わる点は代車を収益化する3つのメリットをご覧ください。わナンバーの取得そのものの準備は、姉妹サイトのわナンバー取得の準備チェックリストで確認できます。

よくある質問

無料の代車でも同意書は必要ですか?
法律で作成が義務づけられているわけではありませんが、作っておくほうが安全です。国民生活センターが紹介した前橋地裁太田支部の判決(令和5年9月20日)では、期限を決めずに貸した無償代車が返されず、1日6,050円、150日分の損害賠償が認められました。返却日と返還遅延の扱いを書面で決めておくと、争いになりにくくなります。
代車の同意書と注意書きはどう違いますか?
同意書は貸出条件を確認してお客様に署名してもらう書類で、工場が控えを保管します。注意書きは運転中に見返すための紙で、禁止事項、燃料の扱い、事故時の連絡先を短くまとめます。両方を用意し、注意書きは車内に置いておく使い方をおすすめします。
ひな形の損害負担の条項はそのまま使えますか?
このページのひな形は一般的な記載例で、法的な助言ではありません。お客様にお金の負担を求める条項は書き方しだいで争いになるため、負担額や遅延時の賠償の定め方は、使う前に弁護士などの専門家に確認してください。
貸出前の写真は何を撮ればよいですか?
車の前後左右、ホイール、フロントガラス、車内の座席、燃料計と走行距離計を撮影します。国民生活センターは、利用前と返却時に車の状態を確認して記録し、返却時も写真を撮っておくことを勧めています。
代車を有償にすると書類はどう変わりますか?
有償で貸すには道路運送法第80条の許可が要り、許可を受けたレンタカーでは、貸渡料金と貸渡約款の明示、貸渡証の交付と携行、貸渡簿の備え付けと2年間の保存が通達で求められます。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月6日時点で確認したものです。保険の補償内容は契約や保険会社ごとに異なるため、実際の契約内容は各保険会社の約款・重要事項説明書でご確認ください。

無料の代車を、売上になる代車へ

わにゃふるカービジネスは、整備工場・鈑金工場が代車をわナンバーで有償貸出に切り替えるための仕組みです。レンタカー事業の許可は本部のものを使うため、自社で許可を取る必要はありません。収支の考え方と加盟条件をまとめた資料をお送りします。

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