整備工場の代車管理|工場代車の経費・必要台数・保険と貸出管理表の作り方

整備工場や鈑金工場の代車は、お客様には無料のサービスに見えても、工場から見れば税金・保険・車検がかかり続ける車両です。台数が足りなければ入庫を断ることになり、多すぎれば駐車場と維持費を圧迫します。この記事では、工場代車にかかる経費の項目、必要な台数を入庫数と平均貸出日数から逆算する考え方、貸出管理表に入れる項目、代車に付ける保険を整理します。最後に、代車をレンタカー(わナンバー)にしたときに管理がどう変わるか、無料のまま続けるか有償にするかを考えるときの判断軸をまとめます。

整備工場が代車を持つときの経費の項目

代車の費用は、買ったときに一度出ていくお金と、持っているあいだ毎年かかるお金、貸すたびにかかるお金の3つに分けると把握しやすくなります。金額は車種、年式、地域、保険の条件で大きく変わるため、ここでは項目だけを並べます。自社の帳簿から1台ずつ拾い出して、表の右端の列を埋めてみてください。

区分費用の項目中身記入欄(自社の金額)
取得車両の取得費中古車の仕入れ代や下取り車の転用分に、名義変更・登録の費用が加わります円
保有自動車税(種別割)・軽自動車税(種別割)持っているあいだ毎年かかります。額は車種で異なります円/年
保有自動車重量税車検ごとにかかります円/車検ごと
保有自賠責保険車検の期間に合わせて加入します円/車検ごと
保有任意保険代車に付ける自動車保険です。対人・対物・搭乗者・車両などを選びます円/年
保有車検・定期点検自社工場で行う場合も工賃と部品代を原価として数えます円/年
保有タイヤ・バッテリー・消耗品減り具合に応じて交換します円/年
保有駐車スペース代車置き場に使っている土地や区画も費用に含めます円/月
貸出ごと燃料お客様負担にしていない分のガソリン代がかかります円/回
貸出ごと洗車・車内清掃返却後の清掃に材料と人手がかかります円/回
貸出ごと受付・説明の人手同意書の記入、傷の確認、鍵の受け渡しに時間がかかります分/回

見落とされやすいのが、表の下の3行です。燃料、洗車、受付の手間は1回ごとには小さく見えますが、貸出件数を掛けると年間でまとまった額になります。逆に、車両の取得費は下取り車を転用していると「ゼロ円」と扱われがちですが、売れば入ったはずの金額を代車に回していると考えると、実際には費用がかかっています。

合計が出たら、年間の費用を年間の延べ貸出日数で割り、代車1台を1日貸すのにいくらかかっているかを出しておくと、後で有償化を検討するときの基準になります。レンタカーとして貸す場合の料金の決め方は代車の料金相場で、大手レンタカー会社の公式料金表とあわせて整理しています。

工場代車の必要台数の考え方

代車の台数は「なんとなく3台」で決まっていることが多いのですが、必要な台数は、ひと月に何件貸すかと、1件あたり何日貸すかでほぼ決まります。式にすると次のとおりです。

必要台数の目安

必要台数 = 月の延べ貸出日数 ÷ 30日 ÷ 稼働率
月の延べ貸出日数 =(車検・点検の貸出件数 × 平均貸出日数)+(鈑金・修理の貸出件数 × 平均貸出日数)
稼働率は、代車が貸し出されている日の割合の目標です。洗車や点検、予約の重なりで空く日があるため、100%にはなりません。

例えば、仮に月の入庫のうち代車を出すのが車検で20件・平均2日、鈑金修理で4件・平均10日だとします。延べ貸出日数は20×2+4×10で80日になります。これを30日で割ると約2.7台です。稼働率の目標を80%と置けば2.7÷0.8で約3.3となり、4台あれば予約の重なりにも対応しやすい、という見当がつきます。ここに挙げた数字は計算の例で、実際の件数と日数は自社の入庫記録から拾ってください。

平均貸出日数は、作業の種類で大きく違います。車検や法定点検は短く、事故の鈑金修理は部品の入荷待ちや保険会社との協定で長くなりがちです。参考として、損保ジャパンは代車費用特約のパンフレットで、同社の支払実績による平均貸出日数を19日と記載しています。これは事故などで保険から代車費用(レンタカー費用)が支払われたケースの平均で、車検の代車には当てはまりませんが、鈑金工場が事故車を預かるときの見積りには目安になります。

台数を決めるときは、繁忙期も見ておく必要があります。車検の満了が集中する月や、雪の多い地域の冬場の事故など、月によって件数が偏る工場では、年平均で台数を決めると繁忙期に足りなくなります。過去1年分の月別の貸出件数を並べ、上位の月で計算し直しておくと安心です。

代車の貸出管理表に入れる項目

代車が3台を超えると、ホワイトボードや記憶だけでは「どの車が今どこにあるか」が追えなくなります。貸出管理表は、表計算ソフトでも紙の台帳でもかまいません。1台ごとに、予約・貸出中・返却・点検の4つの状態を順に記録できる形にしておくと、空き状況がひと目でわかります。

状態記録する項目使いみち
予約予約日、お客様名、入庫予定日、返却予定日、希望の車種(軽・AT限定など)台数を割り振り、重なりを確認します
貸出中貸出日時、運転者名、免許証確認の有無、貸出時の走行距離と燃料、同意書の有無、写真の保存先所在を把握し、返却が遅れたら連絡します
返却返却日時、返却時の走行距離と燃料、傷・汚れの有無、確認した担当者、お客様の確認署名傷トラブルを防ぎ、燃料の精算を確かめます
点検・清掃洗車・清掃の完了日、タイヤ・オイル・警告灯の確認、次回の車検・点検の期限次の貸出に出せる状態かを判断します

管理表には、車両ごとの欄として、登録番号、車検の満了日、自賠責と任意保険の満了日も入れておきます。代車は自社の車なので、お客様の車の車検管理は徹底していても、代車の車検切れや保険切れに気づかないことがあります。満了日の1か月前に色が変わるようにしておくと防げます。

返却予定日を過ぎた行が目立つようにしておくことも大切です。期限を決めずに貸した無償の代車が返ってこず、裁判で1日6,050円、150日分の損害賠償が認められた例があり、返却日を記録して早めに連絡する運用は、そうした長期化を防ぐ手段になります。貸出時の同意書とチェックリストは代車の貸出同意書テンプレートに載せています。

工場代車に付ける保険と、お客様の保険の関係

代車の保険は、誰が運転しているか、どの車で事故が起きたかで使う保険が変わります。工場の代車は工場が所有する自動車なので、まず代車に付いている自賠責保険と、工場が掛けている任意保険(付けていれば)が基本です。日弁連交通事故相談センターには、修理工場の代車に任意保険が付いておらず、工場から「相手への賠償は自分で」と言われたという相談事例が載っています。代車には任意保険を付けておくほうが、お客様との関係を損ねずに済みます。

場面主に関係する保険注意点
お客様が代車を運転中の事故代車に付いている保険。お客様の自動車保険の他車運転特約が使える場合もあります他車運転特約は駐車・停車中の事故を補償しない例があり、運転者の限定や年齢条件の範囲内でだけ使えます。法人契約にはセットされない会社もあります
従業員が引取・納車でお客様の車を運転中の事故お客様の任意保険は、自動車取扱業者が業務として預かっている間は使えません工場側で受託自動車保険(整備受託自動車保険特約)などに入っておく必要があります
預かった車を工場内で傷つけた・盗まれた自動車管理者賠償責任保険などで備えます賠償は事故車の時価が限度。技術の拙劣や仕上げ不良による損害は対象外です
預かった車が使えなくなった期間の代車費用自動車管理者賠償責任保険の使用不能損害担保特約(オプション)など東京海上日動の商品では、使用不能になって4日目以降30日目までの損害で、1台10万円が限度です

表の2行目は見落とされがちです。東京海上日動の総合自動車保険の約款は、記名被保険者の承諾を得て車を使う人を被保険者に含める一方で、「自動車取扱業者が業務として受託したご契約のお車を使用または管理している間」を除いています。自動車取扱業者には自動車修理業が含まれ、その使用人も含まれます。この約款のもとでは、整備士がお客様の車を引き取りに行く途中の事故は、お客様の保険では払われないことになります。

日本自動車整備振興会連合会の団体保険「自動車整備業賠償共済保険」の案内(平成30年度加入用)も、整備事業者の業務中(納車・引取り・車検場への往復等)の事故はお客様の任意保険では補償されないと説明しています。この資料は古いため、最新の条件と保険料は各地の振興会で確認してください。代車と保険の関係は代車の保険はどれが使えるか、お客様が代車で事故を起こしたときの流れは代車で事故を起こしたときの対応で扱っています。

代車をレンタカー化した場合の管理の変化

代車を有償で貸すには、道路運送法第80条の許可(自家用自動車有償貸渡業)を受け、わナンバーのレンタカーにする必要があります。許可を受けると、車検の期間、点検の間隔、帳簿の扱いが一般の自家用車と変わります。普通・小型の乗用車(10人以下)を代車にしている場合で比べると次のとおりです。

項目自家用の代車(白ナンバー)レンタカーの代車(わナンバー)
車検の有効期間(乗用車)初回3年、以後2年初回2年、以後1年
車検の有効期間(軽乗用車)初回3年、以後2年初回から2年
定期点検の間隔(乗用車)1年ごとです6か月ごとです(貨物の普通・小型車などは3か月ごと)
整備管理者レンタカー用の基準(10両)は適用されません乗車定員10人以下・車両総重量8t未満なら10両以上で選任します
任意保険工場が任意に決めます対人1人8,000万円以上、対物1件200万円以上、搭乗者1人500万円以上が許可の基準です
貸出の記録工場が任意に決めます貸渡簿を備え、貸渡しの終了日から2年間保存します
お客様に渡す書類工場が任意に作る同意書などを使います貸渡料金と貸渡約款を明示し、貸渡証を交付して携行させます
行政への報告ありません毎年5月31日までに貸渡実績報告書などを運輸支局へ提出

車検が1年ごとになり、点検が6か月ごとになると、代車1台あたりの整備の回数は増えます。整備工場にとっては自社で行える作業ですが、そのぶん代車が貸し出せない日も増えるため、台数の計算で稼働率を少し低めに見ておくと実態に合います。貸渡証には「貸渡期間が2日以上となる場合には、日常点検を借受人が実施することとなる」旨を記載することになっており、お客様への説明も一つ増えます。

一方で、レンタカーにした代車は、お客様の自動車保険の代車費用特約(レンタカー費用特約)の対象になりえます。各社の特約は、支払の対象を「わ」「れ」ナンバーのレンタカーで、保険会社が手配または承認した事業者から借りたものに限っており、工場が無償で貸す代車は対象外と明記している会社もあります。特約の仕組みは代車費用特約とは、わナンバー車の車検や税金の細かな決まりは姉妹サイトのわナンバーの車検で解説しています。

代車を無料のままにするか有償化するかの判断軸

どちらが正しいということはなく、工場の入庫の中身と、管理に割ける人手で答えが変わります。次の点を順に確かめていくと、自社に合う形が見えてきます。

  • 代車を出す入庫のうち、事故の鈑金修理がどれくらいを占めているか。事故修理が多い工場ほど、お客様の代車費用特約の対象になる貸出が増えます
  • 代車1台を1日貸すのにかかっている費用(前の章で出した数字)を、いまの工賃や車検料金で吸収できているか
  • 車検1年・点検6か月への切り替えで増える整備を、自社の工場の空き時間でこなせるか
  • 貸渡簿の保存、貸渡証の交付、年1回の実績報告といった事務を、誰が担当するか
  • 「代車無料」を集客の売りにしているか。有償化しても車検の代車は無料のまま残すなど、作業の種類で分ける方法もあります
  • 代車の台数が10両に近いか。10両以上になると整備管理者の選任が必要になります

自社で許可を受けて、ここまでの事務をすべて回すのは、小規模な工場には負担が大きいのも確かです。わにゃふるカービジネスでは、加盟した工場がレンタカー事業者の営業所となり、本部の許可のもとでわナンバーの代車を有償で貸し出します。自社で許可を取る必要はなく、貸渡しの書式や運用の手順は加盟店向けに用意しています。有償化で変わる点は代車を収益化する3つのメリット、始めるまでの手順はご利用の流れで紹介しています。

よくある質問

整備工場の代車には何台くらい必要ですか?
月の延べ貸出日数を30日で割り、稼働率の目標で割ると目安が出ます。延べ貸出日数は、作業の種類ごとに「貸出件数×平均貸出日数」を足して求めます。車検と事故修理では貸出日数が大きく違うため、分けて計算してください。
代車の経費にはどんな項目がありますか?
取得費のほか、自動車税(種別割)、自動車重量税、自賠責保険、任意保険、車検・点検、タイヤなどの消耗品、駐車スペース、貸出ごとの燃料・洗車・受付の手間があります。年間の合計を延べ貸出日数で割ると、1台1日あたりの原価が出ます。
工場の従業員がお客様の車を運転中に事故を起こしたら、お客様の保険は使えますか?
原則として使えないと考えておくべきです。東京海上日動の約款は、自動車取扱業者が業務として預かった車を使用・管理している間を被保険者の範囲から除いており、日本自動車整備振興会連合会の団体保険の案内も同じ趣旨を説明しています。工場側で受託自動車保険などに入っておく必要があります。
代車をレンタカーにすると車検はどう変わりますか?
普通・小型の乗用車は初回2年・以後1年になり、定期点検は6か月ごとになります。軽自動車のレンタカーは初回から2年です。乗車定員10人以下・車両総重量8t未満のレンタカーが10両以上になると、整備管理者の選任も必要になります。
自社で許可を取らずに代車を有償にできますか?
許可を持つレンタカー事業者の営業所として貸し出す方法があります。わにゃふるカービジネスでは、加盟工場が営業所となり、本部の許可のもとでわナンバーの代車を有償で貸し出します。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月6日時点で確認したものです。保険の補償内容は契約や保険会社ごとに異なるため、実際の契約内容は各保険会社の約款・重要事項説明書でご確認ください。

無料の代車を、売上になる代車へ

わにゃふるカービジネスは、整備工場・鈑金工場が代車をわナンバーで有償貸出に切り替えるための仕組みです。レンタカー事業の許可は本部のものを使うため、自社で許可を取る必要はありません。収支の考え方と加盟条件をまとめた資料をお送りします。

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