代車の傷に覚えがない時の対処|許容範囲・擦った時の連絡と修理代

返却した代車の傷に覚えがないのに修理代を求められた、あるいは自分で擦ってしまったがどうすればよいか。どちらも、貸し出す前と返したときに車の状態を両者で確かめていれば、ほとんどの行き違いは防げます。傷の「許容範囲」を決めた公的な基準はありません。この記事では、国民生活センターが公表したレンタカーの傷トラブルの事例を手がかりに、お客様がとるべき行動、傷をつけたときの連絡と保険、整備工場が決めておきたいチェックの運用を順に整理します。

代車の傷に覚えがないと言われるトラブル

整備工場の代車そのものを扱った国民生活センターの公表資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。ただ、「借りた車を返す」という点は代車もレンタカーも同じです。レンタカーでは、返却時の傷をめぐる相談が毎年寄せられています。

国民生活センターが2021年3月25日に公表した資料によると、レンタカーとカーシェアの相談は「年間500件程度で推移」しており、その中で「つけた覚えのない傷の修理代等を請求された」といった返却時の修理代のトラブルが多いとされています。

年度レンタカー・カーシェアの相談件数
2016年度468件
2017年度526件
2018年度512件
2019年度522件

紹介された事例には、もともと傷だらけの車を借りたのに、返却時にドアの縁の傷を指摘され、修理代と休業補償などとして4万5,000円を請求されたもの(2019年9月受付)があります。保険が適用されず20万円の修理代を請求されたという相談も挙がっています。資料は問題点として、利用前後の車両チェックが的確に行われていない場合があることを指摘しました。

2025年の注意喚起「記録、確認、連絡」

国民生活センターは2025年3月28日にも「レンタカーでの傷トラブルにご用心-記録、確認、連絡!-」を公表しています。利用前に動画と写真を撮り、返却時に立ち会いで問題ないと言われたのに、後日「清掃中にサイドミラーの傷に気付いた」と賠償を求められた事例(2024年8月受付)が紹介されています。

国民生活センターのアドバイス(2025年3月28日)

利用前と返却時には、必ず車の状態を確認して記録すること。返却時も写真を撮っておくことが有効です。また、保険の補償額や免責額、保険や補償制度の適用条件、事故やトラブルが起きた際の対応方法、NOC(休業補償費)などを事前に確認するよう勧めています。

代車の傷の許容範囲に基準はあるか

「どの程度の傷なら気にしなくてよいか」という許容範囲について、国や業界団体が示した公的な基準は見つかりませんでした。工場の代車ならその工場の考え方、レンタカーなら各社の約款で決まります。

参考になるのはレンタカー会社の約款の書き方です。タイムズカーレンタルの貸渡約款第32条1項は、借受開始時の状態で返却することを求めたうえで、「通常の使用による摩耗を除き」、借りた側の責任による汚損や損傷は元に戻す費用を負担すると定めています。普通に使って生じる摩耗と、ぶつけたり擦ったりした損傷とを分ける考え方です。

一方で、オリックスレンタカーは「たとえ小さなキズやヘコミであっても」事故手続きが必要と案内しています。ニッポンレンタカーも、傷やへこみの大小や相手の有無にかかわらず「事故扱い」になり、手続きをしていないと保険や補償が使えず自己負担になると書いています。小さい傷だから黙っていてよい、という扱いにはなっていません。

代車は年式が古く、もともと小傷のある車も少なくありません。だからこそ、貸す時点でどの傷があったかを記録しておかないと、返却時に「前からあった傷か」「今回ついた傷か」を誰も判断できなくなります。

代車を擦った・ぶつけた時の連絡

代車を擦った、ぶつけた、駐車中に傷をつけられていた。いずれの場合も、すぐにやることは同じです。

  1. 安全な場所に車を止め、けが人がいれば救護と119番を優先する
  2. 相手がいる事故や物を壊した事故は、小さなものでも警察に届け出る
  3. 代車を借りた工場やディーラーに、その場で電話で知らせる
  4. 自分の自動車保険の保険会社(または代理店)に連絡し、使える補償を確認する
  5. 傷の位置と周りの状況を写真に撮り、相手がいれば連絡先を控える

国民生活センターも、傷や事故はその場ですぐ警察とレンタカー会社に連絡するよう勧めています。警察への届出がないと、保険の手続きで必要な事故の証明が取れないことがあります。「自分で直して返せば済む」と考えて連絡を後回しにすると、補償が使えなくなるおそれがあります。

代車をぶつけた修理代と保険

代車の修理代を誰が払うかは、代車に付いている保険、自分の契約の特約、工場との取り決めの組み合わせで決まります。

自分の保険の他車運転特約

修理や点検で自分の車を預けているあいだに借りた代車は、多くの保険会社で他車運転特約の対象になる「他の自動車」に当たります。三井住友海上やソニー損保は、補償される例として修理工場の代車を挙げています。東京海上日動の約款は、自分の車が整備や修理で工場の管理下にあるあいだに臨時に借りる車を「臨時代替自動車」と定めています。

確認すること公式の説明の内容
相手への賠償(対人・対物)代車を自分の車とみなして、自分の契約の内容で支払われる
代車そのものの修理代自分の契約に車両保険があり、その条件で支払える事故に限られる
駐車中・停車中の損害対象外(東京海上日動の約款、三井住友海上の説明)。当て逃げなどは補償されない
運転者の範囲運転者限定や年齢条件の範囲内でだけ補償される(ソニー損保)
法人名義の契約ソニー損保は記名被保険者が個人の契約に自動セットし、法人契約にはセットされない
等級使えば自分の車の事故と同じく等級が下がる。ソニー損保は3等級ダウンと案内

代車に任意保険が付いていなかった例もあります。日弁連交通事故相談センターが紹介した相談では、工場から「任意保険に入っていないので相手への賠償は自分で」と言われたケースについて、自賠責で人身損害が傷害120万円まで出ること、他車運転特約で相手の物的損害も支払われうることが回答されています。代車の保険の組み立ては代車の保険、事故の流れは代車で事故を起こしたらで詳しく扱っています。

NOC(休業補償)の考え方

レンタカーには、修理のあいだ車を貸せなくなる分の営業補償としてNOC(ノンオペレーションチャージ)があります。大手は、自走して予定の店舗に返した場合2万円、自走できなかった場合5万円を基本にしています(タイムズカーレンタルはクラスにより最大10万円)。免責補償に入っていてもNOCは別にかかり、免除するには別のオプションが必要です。国民生活センターの2025年の事例2も、フルカバー型の補償を付けていたのにNOC2万円を求められた相談でした。

工場が無料で貸す代車に、NOCに当たる決まりがあるわけではありません。工場が修理中の休業分を求めるかどうかは、事前に取り決めていたかで変わります。取り決めなしに後から請求すると、レンタカー以上に揉めやすくなります。

代車の傷で揉めないために(お客様向け)

  • 受け取る時に、工場の担当者と一緒に車の周りを一周して傷を確認する
  • 四隅、バンパー、ドアの縁、ホイール、サイドミラーを写真か動画で残す
  • 気になる傷はその場で伝え、チェックシートに書いてもらう
  • 返す時も担当者の立ち会いで確認し、写真を撮る
  • 擦った、ぶつけたときは隠さず、その日のうちに工場へ連絡する

整備工場が決めておくこと

傷のトラブルを防ぐ仕組みは、工場の側で作るほうが確実です。国民生活センターが全国レンタカー協会に要望した内容も、車体の傷のチェックとその記録でした。工場の代車でも考え方は同じです。

決めておく項目運用の例
貸出時のチェック車体の図に既存の傷を書き込み、お客様に確認のサインをもらう
写真の記録貸出時と返却時に同じ角度で撮り、日付つきで保存する
返却時の立ち会いお客様の前で確認し、その場で問題の有無を伝える
傷をつけた場合の負担修理代、休業分を求めるか、保険を使う場合の手順を書面にしておく
代車の保険代車に付けている任意保険の内容と、使う場合の流れを説明できるようにする

返却時に立ち会いで「問題なし」と伝えたあとで傷を指摘すると、2025年の事例1のように強い不信を招きます。確認は返却の場で終わらせる運用が向いています。チェックシートと同意書の書式は代車の貸出同意書とチェックリストにまとめています。

なお、お客様の自動車保険は、工場が業務として預かった車を運転・管理しているあいだは使えないと約款で定められています(東京海上日動の総合自動車保険)。預かった車の損害には、自動車管理者賠償責任保険など工場側の保険で備えます。代車と預かり車の両方で、どの保険が効くかを整理しておくと説明がぶれません。

代車をわナンバーのレンタカーにすると、貸渡約款で傷や事故のときの負担を定めたうえで貸し出せます。わにゃふるカービジネスでは、加盟した工場が本部の許可のもとで営業所として代車を有償で貸せるため、自社で許可を取る必要はありません。仕組みは代車とは?無料貸出をやめて収益化する仕組みをご覧ください。

よくある質問

代車の傷に覚えがないのに修理代を請求されたら?
まず貸出時の記録(チェックシートや写真)があるか確認し、傷がいつついたかを工場と一緒に確かめてください。記録がない場合は、その旨を伝えて話し合います。話がまとまらないときは、消費者ホットライン188から最寄りの消費生活センターに相談できます。
代車の傷の許容範囲はどれくらいですか?
公的な基準はありません。工場の取り決めやレンタカーの約款で決まります。タイムズカーレンタルの約款は通常の使用による摩耗を除いていますが、オリックスレンタカーは小さな傷でも事故手続きが必要としています。
代車を擦ってしまったら、まず何をすればいいですか?
工場やディーラーにすぐ連絡し、相手がいる場合や物を壊した場合は警察にも届け出ます。そのうえで自分の保険会社に連絡し、他車運転特約などの使える補償を確認します。
代車をぶつけた修理代は自分の保険で払えますか?
多くの保険会社で修理工場の代車は他車運転特約の対象です。相手への賠償は自分の契約内容で支払われ、代車自体の修理代は自分の契約に車両保険があり、その条件で払える事故に限られます。駐車中・停車中の損害は対象外です。
NOCとは何ですか?代車でも払うのですか?
NOCはレンタカー会社が修理中に貸せない分の営業補償として求める費用で、大手は2万円か5万円が基本です。工場の無料代車に決まったNOCはなく、事前の取り決め次第です。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月6日時点で確認したものです。保険の補償内容は契約や保険会社ごとに異なるため、実際の契約内容は各保険会社の約款・重要事項説明書でご確認ください。

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