もらい事故で車が修理に入ったとき、代わりに借りた車の費用は、事故の相手に損害として請求できる場合があります。ただし、どんな場合でも認められるわけではありません。日本損害保険協会は、事故で車が使えない期間にやむを得ず代わりの車を借り、実際に費用が生じた場合に損害として認められると説明しています。この記事では、相手方に代車費用を請求できる条件、認められた例と認められなかった例、期間や車種の考え方、自分の保険の代車費用特約との使い分けを、公的な資料に沿って整理します。
もらい事故の代車費用を相手に請求できる根拠
交通事故で他人の車を壊した人は、民法第709条(不法行為)に基づいて損害を賠償する責任を負います。日本損害保険協会の「損害保険Q&A」問46は、代車費用もこの損害に含まれると説明しています。
日本損害保険協会 損害保険Q&A 問46より
事故により自動車が使えない期間中、やむを得ず代わりの自動車を借用した場合の費用は、損害賠償請求できます。代車費用が損害として認められるのは、事故により自動車が使えない期間において、やむを得ず代替の自動車を借用したり、あるいは運賃を支払うなど実際に費用が生じた場合です。
公益財団法人日弁連交通事故相談センターも、よくある質問(Q50)で物損事故の損害の種類を次のように挙げています。
日弁連交通事故相談センター よくある質問 Q50より
物損事故の場合は、積極損害として自動車の修理費用や買替え諸費用、修理の間の代車費用、消極損害として休車損害などがあります。なお、物損事故については、原則として精神的損害は認められません。
代車費用は、修理費用と同じく実際に出ていくお金(積極損害)として扱われています。これと別に挙がっている休車損害は消極損害に分類されており、代車費用とは別の項目です。
問46の書き方から、代車費用は「実際に費用が生じた場合」の損害です。工場から無料で代車を借りていて費用が発生していなければ、代車費用として請求するものはありません。
代車費用が認められる例と認められない例
問46は、代車費用が認められた例と認められなかった例を挙げています。分かれ目は、車が使えないと困る事情があり、ほかの手段で代わりがきかなかったかどうかです。
| 区分 | 例(問46より) | 考え方 |
|---|---|---|
| 認められた例 | 車を使って事業を営んでいて、ほかの所有車でカバーできず、車が使えなければ営業上の損害が出る場合 | 仕事に車が必要で、代わりの手段がない |
| 認められた例 | 修理中の車を普段の通勤に使っていて、ほかに電車やバスなどの通勤手段がない場合 | 日常の移動に車が必要で、公共交通で代われない |
| 認められなかった例 | 通勤に使っていたが、ほかにも車を持っていた場合 | 手元の別の車で代わりがきく |
| 認められなかった例 | 月に1度程度しか車に乗っていなかった場合 | 使えない期間に困る事情が小さい |
条件は2つです。困る事情があること、代わりの手段がないことです。この表から言えるのは、「事故で車が使えなくなった」ことだけでは足りないという点です。代車を借りた理由を、仕事や通勤、家族の送迎など具体的な使い道で説明できるようにしておくと、話し合いが進めやすくなります。
代車費用が認められる期間と車種の考え方
代車費用は、借りた日数分がそのまま認められるとは限りません。考え方の軸は、修理や買い替えに必要な相当な期間と、被害車の使用目的や使用状況に見合う車種の2つです。
期間は、修理や買い替えに必要な相当な期間かどうかで判断されます。部品の入荷待ちや、相手方の保険会社との修理内容の確認に時間がかかることもあり、どこまでが相当かは事故ごとに異なります。インターネット上には「修理なら何週間、買い替えなら何か月」といった目安も見られますが、裁判所、法テラス、日弁連、日本損害保険協会などの公開資料で、公式な日数の目安は確認できませんでした。この記事では日数を示しません。
車種も、被害車の使用目的や使用状況に見合うかどうかで判断されます。どのクラスまでが相当かを示した公的な基準は、公開資料では見つかりませんでした。借りる車を選ぶときは、被害車の使い方に照らして説明できる車にしておくのが無難です。
期間や車種で争いになりやすいのは、借りた後で相手方と話す場合です。代車を借りる前に相手方の保険会社へ連絡し、代車が必要な事情、借りる車種、修理の見込み日数を伝えて了解を得ておくと、後の食い違いを減らせます。
事故の相手の保険に代車費用を請求する流れ
相手が任意保険に入っていれば、代車費用の話は相手方の保険会社とすることが多くなります。流れは、おおむね次のとおりです。
- 事故の届出を警察にし、相手の氏名、連絡先、加入している保険会社を確認する
- 修理工場に車を入れ、修理の見込み日数を工場に聞いておく
- 相手方の保険会社に、代車が必要な事情(通勤、仕事など)と、借りる車種を伝える
- 代車を借り、借りた期間と費用が分かる領収書や貸渡しの記録を保管する
- 修理が終わったら、修理費と合わせて代車費用を請求する
修理の見込み日数を説明するときは、修理工場の見積書や作業の記録が役に立ちます。部品待ちで日数が延びたなら、その事情を工場に書面で出してもらうと説明しやすくなります。
相手が任意保険に入っていない場合や、過失の割合で話がまとまらない場合は、相手方からの支払が遅れることがあります。困ったときは、日弁連交通事故相談センターなどの相談窓口を利用できます。
自分の代車費用特約との使い分け
問46は、被害者自身の自動車保険(代車費用特約)で補償できる場合もあると書いています。代車費用特約(レンタカー費用特約)は、事故で車が使えないあいだに借りたレンタカーの費用を、日額×日数を上限に支払う特約です。相手方への請求と比べると、次のような違いがあります。
| 項目 | 相手方への請求 | 自分の代車費用特約 |
|---|---|---|
| 支払の根拠 | 相手の賠償責任(民法第709条) | 自分の保険契約の特約 |
| 認められる条件 | やむを得ず借り、実際に費用が生じたこと(問46) | 特約の条件(事故か故障か、レッカー搬送の有無など) |
| 期間と金額 | 相当な期間、使用目的に見合う車種の範囲 | 契約した日額と日数の上限(事故30日、故障15日が多い) |
| 借りられる車 | 定めはないが、相当な車種に限られる | 「わ」「れ」ナンバーのレンタカーで、保険会社が手配または承認した事業者の車 |
| 等級への影響 | 影響しない(相手の保険から支払われる) | 特約だけなら等級は下がらない(東京海上日動、損保ジャパン、三井住友海上、ソニー損保で確認) |
| 相手が無保険、話し合いが長引く場合 | 支払が遅れることがある | 条件を満たせば相手と関係なく支払われる |
自分に過失のないもらい事故なら、まず相手方へ請求するのが基本です。相手が保険に入っていない、過失の割合で争いがある、修理が長引きそうといった事情があるときは、自分の特約を使うほうが早く確実なことがあります。どちらを使うかは、自分の保険会社に事故の状況を伝えて相談してください。特約の各社比較は代車特約とはにまとめています。
自分が代車を運転しているときに事故に遭った場合の保険は代車の保険はどうなる?、事故直後の対応は代車で事故を起こした場合で扱っています。
整備工場が代車を貸すときに決めておくこと
もらい事故の車を預かる整備工場、鈑金工場は、お客様から「代車代は相手に請求できるか」と聞かれる立場にあります。工場として決めておくと、お客様の請求を助けられる点を挙げます。
- 無料の代車を貸す場合、お客様に費用が発生しないため、代車費用として相手に請求するものはないことを伝える
- 有料で代車を貸すなら、道路運送法第80条の許可を受けた貸し方(「わ」ナンバー車)にする(代車を有料で貸すのは違法?)
- 入庫日、修理の着手日、部品の入荷日、完成日を記録し、相手方の保険会社に説明できるようにする
- 貸出の日数と料金が分かる書類(貸渡証、領収書)をお客様に渡す
- 相手方の保険会社と修理内容の確認が済むまで作業を待つ場合は、その日数も記録に残す
代車の期限も書面で決めておく
国民生活センターの『国民生活』2025年9月号「暮らしの判例」は、中古車販売店が無償で貸した代車を返さなかった事例を紹介しています(前橋地裁太田支部 令和5年9月20日判決)。期限を定めずに貸していた代車について、裁判所は返還を求める書面が届いてから10日後に貸し借りが終わったと認め、1日6,050円の使用相当損害額で150日分、90万7,500円の賠償を認めました。もらい事故の修理は相手方との話し合いで長引くことがあります。無料の代車でも、返却の期限と延長の扱いを書面にしておくと安心です。
わにゃふるカービジネスでは、加盟した工場がレンタカー事業者の営業所になり、本部の許可のもとで代車を「わ」ナンバー車として有償で貸し出します。自社で許可を取る必要はありません。お客様にとっては実際に費用が生じた代車になり、相手方への請求や、条件を満たせば自分の代車費用特約の対象になりえます。料金の決め方は代車の料金相場、仕組みは代車を収益化するメリットをご覧ください。
よくある質問
- もらい事故で借りた代車の費用は相手に請求できますか?
- 事故で車が使えない期間に、やむを得ず代わりの車を借りて実際に費用が生じた場合は、損害として請求できます(日本損害保険協会 損害保険Q&A 問46)。
- 代車費用が認められないのはどんな場合ですか?
- 問46は、通勤に使っていたがほかにも車を持っていた場合や、月に1度程度しか車に乗っていなかった場合を、認められなかった例として挙げています。
- 代車は何日分まで請求できますか?
- 修理や買い替えに必要な相当な期間が基本です。公的機関の公開資料で、公式な日数の目安は確認できませんでした。事前に相手方の保険会社と見込み日数を共有しておくと、食い違いを減らせます。
- 工場の無料代車を借りた場合も、代車費用を相手に請求できますか?
- 費用が発生していなければ、代車費用として請求するものはありません。問46は、実際に費用が生じた場合に損害として認められると説明しています。
- 相手に請求するのと自分の代車費用特約を使うのはどちらがよいですか?
- 過失のないもらい事故なら相手方への請求が基本です。相手が無保険の場合や話し合いが長引く場合は、自分の特約を使うほうが早いことがあります。特約だけなら等級は下がりません。
出典・参考資料
- 日本損害保険協会 損害保険Q&A 問46
https://soudanguide.sonpo.or.jp/car/q046.html - 日弁連交通事故相談センター よくある質問
https://n-tacc.or.jp/qa - e-Gov法令検索 民法
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - 三井住友海上 GK クルマの保険 レンタカー費用特約
https://www.ms-ins.com/personal/car/gk/compensation/car_04.html - ソニー損保 事故時レンタカー費用特約
https://www.sonysonpo.co.jp/auto/coverages/acvr013.html - 損保ジャパン 等級・料率制度
https://www.sompo-japan.co.jp/kinsurance/automobile/thekuruma/cost/con1/ - 東京海上日動 トータルアシスト自動車保険 パンフレット兼重要事項説明書(2026年1月1日以降始期用)
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/service/pdf/total_assist_pamphlet_260101.pdf - e-Gov法令検索 道路運送法
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000183 - 国民生活センター『国民生活』2025年9月号 暮らしの判例
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202509_08.pdf
記載内容は2026年10月6日時点で確認したものです。保険の補償内容は契約や保険会社ごとに異なるため、実際の契約内容は各保険会社の約款・重要事項説明書でご確認ください。
無料の代車を、売上になる代車へ
わにゃふるカービジネスは、整備工場・鈑金工場が代車をわナンバーで有償貸出に切り替えるための仕組みです。レンタカー事業の許可は本部のものを使うため、自社で許可を取る必要はありません。収支の考え方と加盟条件をまとめた資料をお送りします。
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