自家用自動車有償貸渡業(レンタカー事業)の許可要件|保険額・申請先・費用

自家用自動車有償貸渡業は、自家用自動車を業として有償で貸すための許可で、一般には「レンタカー事業の許可」と呼ばれます。根拠は道路運送法第80条で、許可の基準と条件は国土交通省の通達「貸渡人を自動車の使用者として行う自家用自動車の貸渡し(レンタカー)の取扱いについて」(最終改正 令和4年5月31日)に定められています。この記事では、整備工場や鈑金工場が代車をレンタカーにする前に知っておきたい要件を、通達の文言に沿って整理します。

自家用自動車有償貸渡業の許可とは

道路運送法第80条は「自家用自動車は、国土交通大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはならない」と定めています。この許可を受けた車には、登録自動車なら「わ」または「れ」、軽自動車なら「わ」の平仮名のナンバーが付きます(自動車登録規則第13条、道路運送車両法施行規則第36条の17)。登記の目的などに書くときの正式名称は「自家用自動車有償貸渡業」です。

国土交通大臣の権限は地方運輸局長を経て運輸支局長に委任されているため、実際の申請先は主たる事務所を管轄する運輸支局です。第80条第2項は、貸し方が運送事業に似ていると認められる場合を除き、大臣は許可をしなければならないと定めています。基準を満たせば許可される仕組みです。

手続きの基本情報をまとめると、申請先は主たる事務所の所在地を管轄する運輸支局長です(通達3.(1)、道路運送法施行令第4条)。申請そのものに手数料はかかりませんが、許可されると登録免許税として1件につき9万円を納めます(登録免許税法 別表第一 第百二十六号)。中部運輸局は、許可までの期間を概ね1か月程度と案内しています。許可を受けた車には、登録自動車なら「わ」か「れ」、軽自動車なら「わ」のナンバーが付きます。

許可の基準(通達1.)

通達が定める許可の基準は大きく3つです。

1. 欠格事由に当たらないこと

申請者と役員が、1年以上の懲役または禁錮の刑の執行を終えてから2年を経過していない者、自動車運送事業やレンタカーの許可を取り消されてから2年を経過していない者などに当たらないことが求められます。2025年6月から刑法上は拘禁刑に一本化されましたが、通達の文言は令和4年版のまま「懲役又は禁錮」と書かれています。

2. 運送事業に似た行為で処分を受けていないこと

申請日前2年以内に、自動車運送事業経営類似行為で処分を受けていないことが条件です。運転手付きで車を貸すなど、タクシーやバスに似た営業をした履歴があると許可されません。

3. 貸渡車に決められた額以上の自動車保険を付けること

保険通達の基準額
対人保険1人当たり8,000万円以上
対物保険1件当たり200万円以上
搭乗者保険(搭乗者が補償対象となる人身傷害保険を含む)搭乗者1人当たり500万円以上

車両保険の加入は通達の基準に入っていません。ただし、代車が事故で壊れたときの修理費を誰が負担するかは事業の収支に直結するため、実務では貸渡約款と保険の組み立てを一緒に考えることになります。

許可に付く条件(通達2.)

許可を受けた後は、次の条件を守り続ける必要があります。代車の運用で手間になりやすいのは、料金・約款の明示、貸渡簿、貸渡証、年1回の報告の4つです。

条件内容
届出氏名・住所、役員、貸渡料金と貸渡約款、廃止は遅滞なく届け出る。配置事務所の変更・増設は事前に届け出る
貸せない車自家用バス(乗車定員30人以上または車両長7m超)と霊柩車は貸し渡せない
保険対人8,000万円・対物200万円・搭乗者500万円以上の保険への加入を続ける
料金と約款の明示事務所での掲示、ウェブサイトへの掲載、書面(電子メール等を含む)のいずれかで借受人に示す
管理配置事務所が貸渡しの状況と整備状況を把握し、適確に管理する
貸渡簿借受人・運転者の氏名住所、免許の種類と番号、登録番号、貸渡日時、走行キロ、料金、事故などを記録し、終了日から2年間保存(電磁的記録も可)
貸渡証貸渡証を交付し、運転者に携行させる(カーシェアリングを除く)
報告毎年5月31日までに貸渡実績報告書と事務所別車種別配置車両数一覧表を提出
禁止事項運転者の労務供給(紹介・あっせんを含む)と名義貸しの禁止

貸渡証に書かれる注意

通達の別記2の様式には「運行中必ず携帯し」呈示を求められたら示すこと、「貸渡期間が2日以上となる場合には、日常点検を借受人が実施することとなる」ことなどが書かれています。数日にわたる代車では、日常点検の説明もお客様にしておく必要があります。

申請に必要な書類

通達3.(2)が挙げる添付書類は次のとおりです。申請書そのものの記載事項は、道路運送法施行規則第52条で、氏名・名称・住所、事務所の名称と所在地、貸渡しの実施計画、貸渡しを必要とする理由とされています。

  • 貸渡料金と貸渡約款
  • 登記簿謄本(個人の場合は住民票)
  • 欠格事由に該当しない旨の確認書
  • 事務所別車種別配置車両数一覧表
  • 貸渡しの実施計画(運送事業に似た行為を防ぐ体制、保険の加入計画、整備管理者の配置計画など)

令和3年11月1日からは、増車や代替のたびの届出が不要になりました(マイクロバスを除く)。代わりに、車を登録するときに運輸支局が発行した「レンタカー事業者証明書」の写しを添付します。近畿運輸局は、この証明書の有効期限を5年と案内しています。登録の具体的な流れと書類は、姉妹サイトのわナンバー登録の必要書類でまとめています。

申請から貸出開始までの流れ

自社で許可を取る場合、おおまかな順番は次のとおりです。最初に決めるのは料金と約款で、ここが固まらないと申請書類がそろいません。

  1. 貸渡料金と貸渡約款を作る。代車として貸す場面(修理中・車検中・事故の相手方の保険で貸す場合など)を想定して、燃料・傷・事故・延長の扱いを約款に書き込みます
  2. 貸渡車に付ける保険を手配する。対人・対物・搭乗者の基準額を満たす契約にします
  3. 申請書と添付書類を、主たる事務所を管轄する運輸支局に提出します
  4. 許可が出たら登録免許税9万円を納め、レンタカー事業者証明書を受け取ります
  5. 代車をわナンバーに登録し直し、貸渡簿と貸渡証の書式を用意して貸出を始めます

許可を受けたあとも、料金や約款を変えたときの届出、毎年5月31日までの実績報告、6か月ごとの定期点検が続きます。代車を有償にする目的が「無料で貸している費用を回収したい」ということなら、こうした継続の手間まで含めて採算を見ておくと判断を誤りにくくなります。無許可のまま料金を取った場合の罰則は代車を有料で貸すのは違法?、無料で貸す場合の書面の整え方は代車の貸出同意書とチェックリストで解説しています。

許可後に変わる車の管理

代車をレンタカーにすると、自家用の白ナンバー・黄ナンバーのときより車検と点検の間隔が短くなります。保有台数が増えると整備管理者の選任も必要になります。

項目自家用乗用車(白ナンバー)レンタカーの乗用車(わ・れ)根拠
車検の有効期間(普通・小型)初回3年・以後2年初回2年・以後1年道路運送車両法第61条、施行規則第37条
車検の有効期間(軽自動車)初回3年・以後2年2年ごと(初回も2年)同上
定期点検1年ごと6か月ごと道路運送車両法第48条第1項
整備管理者原則不要10人以下・8t未満の車は10両以上で選任施行規則第31条の3第4号

レンタカーの貨物車(普通・小型)や乗車定員11人以上の車は、定期点検が3か月ごとになります(自動車点検基準第3条)。代車に軽トラックや1BOXを含める場合は、車種ごとに点検の間隔を確認しておきましょう。車検期間の詳しい考え方はわナンバーの車検期間でも解説しています。

整備工場や販売店の代車だけを対象にした許可の特例や基準の緩和は、国交省の通達にも、確認した運輸支局の公示にも見当たりませんでした(2026年10月6日時点)。代車として貸す場合も、一般のレンタカーと同じ基準が適用されると考えておくのが安全です。

自社で許可を取るか、許可を持つ事業者の営業所になるか

許可そのものは基準を満たせば受けられますが、許可後の貸渡簿・貸渡証・年次報告・保険の手配・料金と約款の整備は、本業の整備や鈑金と並行して続ける仕事になります。代車を数台しか持たない工場では、この管理の手間が収益に見合うかどうかが判断の分かれ目になります。保有台数と入庫数から代車の費用を数える方法は整備工場の代車は何台必要かで紹介しています。

方法向いている工場主な負担
自社で許可を取る代車を多く持ち、レンタカー事業として独立して育てたい申請・登録免許税9万円・約款作成・年次報告・保険手配を自社で行う
許可を持つ事業者の営業所になる代車は数台で、修理・車検の入庫に合わせて有償化したい加盟の費用と本部のルールに沿った運用

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よくある質問

自家用自動車有償貸渡業の許可はどこに申請しますか?
主たる事務所の所在地を管轄する運輸支局長に申請します。中部運輸局は、許可までの期間を概ね1か月程度と案内しています。
許可にかかる費用はいくらですか?
申請手数料はかかりませんが、許可されると登録免許税として1件9万円がかかります(登録免許税法 別表第一 第百二十六号)。
レンタカーに必要な保険の額は?
通達の基準は、対人1人当たり8,000万円以上、対物1件当たり200万円以上、搭乗者1人当たり500万円以上です。車両保険は基準に含まれていません。
貸渡簿は何年保存しますか?
貸渡しの終了日から2年間です。電磁的記録で保存することもできます。
代車をレンタカーにすると車検はどう変わりますか?
普通・小型の乗用車は初回2年・以後1年になり、定期点検は6か月ごとになります。軽自動車は2年ごとです。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月6日時点で確認したものです。保険の補償内容は契約や保険会社ごとに異なるため、実際の契約内容は各保険会社の約款・重要事項説明書でご確認ください。

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